相続の手続きを進める過程で多くの戸籍謄本を収集する必要が出てきます。
本籍地が分からなかったり、本籍が変わったり戸籍が作り替えられたりすると、最新の戸籍だけでは相続関係を説明できないため、対応を検討する必要があります。
また、集めた戸籍は時系列につなげて読み解き、相続関係説明図や法定相続情報一覧図に落とし込んでおくと、手続き先ごとの提出書類が変わっても整理がしやすくなります。
Column
2026.01.29
遺言・遺産相続

相続の手続きを進める過程で多くの戸籍謄本を収集する必要が出てきます。
本籍地が分からなかったり、本籍が変わったり戸籍が作り替えられたりすると、最新の戸籍だけでは相続関係を説明できないため、対応を検討する必要があります。
また、集めた戸籍は時系列につなげて読み解き、相続関係説明図や法定相続情報一覧図に落とし込んでおくと、手続き先ごとの提出書類が変わっても整理がしやすくなります。
目次
戸籍を集める目的は、相続人の範囲を確定するためです。
相続人が確定しないと、誰の同意やどんな資料が必要かが定まりませんし、遺産分割の話し合いや名義変更などの手続きも進みません。
具体的には、戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本などと収集して、それを根拠として相続人の範囲を確定していくこととなります。
相続手続きを進める上で、「被相続人の出生から死亡までが連続する戸籍一式」は実務上ほとんどの場合で必要となります。
まずは被相続人の「出生から死亡までつながっているか」を確認できる状態まで収集を進めると、その後の判断と追加収集が必要な資料が分かってきます。
ここで、「戸籍」に関する用語を整理します。
「戸籍謄本」とは、身分関係の記載を写したもので、相続手続きでは家族関係を確認する入口になります。
本籍を移したり、結婚や離婚を経て戸籍が作り替えられたりしている場合は、「除籍謄本」や「改製原戸籍」も含めてその前後を追う必要が出てきます。
相続で必要な戸籍は、最新の一通だけではなく、出生から死亡までを途切れず追える戸籍一式です。
また、「相続関係説明図」とは、集めた戸籍を根拠に相続人の範囲を明確化するために作成する資料です。戸籍を読み解きながら相続関係説明図を作成しておくと、他の相続人などにも説明しやすくなります。
なお、手続き先に戸籍一式を何度も出したくない場合は、登記官の認証付きの法定相続情報一覧図の写しの交付を受けて、提出を簡素化できることもあります。
また、相続放棄など「被相続人の最後の住所」を求められる手続きもあるため、戸籍とは別に住民票の除票や戸籍の附票などの住所資料が必要となる場合もあります。
【用語整理】戸籍一式と図面の位置付け
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除籍謄本・改製原戸籍 |
戸籍が移ったり作り替えられたりした前後を確認するために必要。 |
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戸籍 |
身分関係の資料。 住所の証明は住民票の除票や戸籍の附票など別資料で行う。 |
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相続関係説明図 |
戸籍を読み解いた内容を整理し、相続関係を説明できるようにまとめた資料。 |
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法定相続情報一覧図 |
戸籍一式の代わりに提出することで、戸籍一式の提出を省ける場合がある。 例えば、相続登記の申請手続、被相続人名義の預金の払戻し手続、相続税の申告、被相続人の死亡に起因する年金等手続などでこの制度を利用することができる。 |
戸籍収集は、闇雲に取り寄せるのではなく、ゴールから逆算して「範囲→請求→確認→図面」の順に進めるとよいでしょう。
【全体マップ】戸籍収集から図面作成までの道筋
※必要な場合は、相続関係説明図を作成し、必要に応じて法定相続情報一覧図の写しの交付を受ける。
戸籍一式がそろったら、戸籍一式を分析して、法定相続人が誰かを確定していきます。
相続人の範囲は、配偶者や子の有無、直系尊属の存否、兄弟姉妹が相続人になるかなど、家族関係によって分岐します。
上述したように、相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍・除籍・改製原戸籍を一式として収集することが必要です。
この戸籍一式がそろえば、その記載内容から婚姻や転籍などで戸籍が移った前後をたどり、相続人の範囲を確認していくことが可能です。
なお、被相続人が離婚や再婚を経ている場合は、その後の戸籍だけでは子の記載が見えないこともあるため、離婚前・再婚前の古い戸籍までさかのぼる必要があります。
また、途中の戸籍が一通でも抜けると、その時点の前後の関係が追えず、再請求が必要になることが多いので注意が必要です。
必要になるのは被相続人の最新の戸籍だけではなく、出生時点から死亡時点までが途切れずにつながる戸籍です。
本籍地や筆頭者が変わると戸籍が移るため、戸籍に記載された本籍を手がかりに順番に追うのが基本となります。
出生から死亡までの連続性が確認できてはじめて、戸籍を根拠に相続関係を説明することが可能になります。
戸籍を受け取ったら、まず次の戸籍へつながる情報が欠けていないかを確認します。
本籍地や筆頭者の記載を手がかりに、その戸籍からひとつ古い戸籍へさかのぼれている状態(連続性がある状態)で、出生時点から死亡時点まで戸籍の記載がつながっていることが必要です。
次に、相続人側は、相続人全員の現在戸籍を用意するのが基本です。
相続人が複数いる場合には、戸籍は相続人全員分を揃えることで初めて相続関係の全体像を把握することができます。
戸籍には住所の記載はないため、連絡先や送付先が必要な場合には、別資料で現住所を確認する必要があります。
相続人の住所も併せて整理しておくと、遺産分割協議書のやり取りなどの工程を進める際の助けになります。
被相続人の最後の住所や相続人らの現住所は戸籍に記載されていないため、戸籍だけでは住所は分かりません。
被相続人の最後の住所を証明することが必要な場合は、被相続人の死亡時の本籍が記載された住民票の除票や、戸籍の附票(の除票)などを収集して住所を確認します。
被相続人の最後の住所は相続開始地になります。
自分以外の相続人の正確な住所が必要な場合は、住民票を取得したり、住所がわからないか曖昧である場合には本籍地の情報から戸籍の附票を取得することで、現在の住所が把握できます。
転籍・転居している場合には、転籍先・転居先でさらに戸籍の附票や住民票の取得が必要となる場合もありますが、戸籍や住所が連続するように順を追って取得することで、最終的には現住所の住民票に辿り着けます。
どの住所資料が必要になるかは提出先や手続きによって変わるので、住民票の除票や戸籍の附票を取得した場合には、「どの手続きに使うか」をメモして戸籍とセットで保管しておくことをおすすめします。
【確認ポイント】戸籍と住所資料の切り分け
被相続人の戸籍請求の前に整理したい情報は、本籍地、筆頭者、氏名と生年月日の3点です。
戸籍の「筆頭者」とは、戸籍謄本の先頭に記載される人のことです。
なお、本籍地は住所とは別物ですので、注意です。
まずは最後に分かっている戸籍を特定し、そこに書かれた本籍地を起点に請求先を決めると作業が進めやすいです。
相続人側の現在戸籍を請求する場合は、相続人それぞれの本籍地や筆頭者が分かるかどうかもあわせて確認する必要があります。
また、相続人の住所が必要になりそうな手続きがあるときは、相続人の住民票や戸籍の附票の取得も早めに検討しましょう。
本籍地が分からない場合でも、手元にある戸籍を一通でも起点にできれば、そこに記載された従前の本籍地などを手がかりに、前の戸籍へさかのぼることが可能です。
分からないからと止まるのではなく、分かっている情報から順にたどると考え、請求の順番を組み立てるようにしましょう。
また、本籍地の記載のある被相続人の住民票の除票を取得するとの方法もあり得ます。
【確認ポイント】本籍地が分からないときの手がかり

戸籍の取り寄せ方は、取得地まで移動できるか、どの程度早く受け取りたいかに加え、自分が請求できる立場かどうか、代理人に請求してもらう予定があるかで最適な方法が変わります。
役所での窓口請求は、その場で書類を確認しながら進められるため、状況によっては書類の不足に気付きやすい方法です。
身分証を持参の上、不安な場合には電話などで必要書類の不足がないかを先に確認してから請求するとよいでしょう。
ただし、請求先が遠方に分散していて移動負担が大きい場合は、件数と距離のバランスで判断します。
とにかく早く揃えたいときや、初回は職員に確認しながら進めたいときは、役所での窓口請求がベストな請求方法です。
【比較表】窓口請求と郵送請求と広域交付
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窓口請求 |
対面で確認しながら進めやすい。 |
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郵送請求 |
遠方から郵送で進められる。 |
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広域交付 |
本籍地と異なる役所窓口で戸籍書類を請求できる。 |
ほとんどの自治体では、戸籍や住民票などの書類の郵送申請に対応しています。
郵送請求の方法や同封する必要書類については、請求先の自治体のホームページなどに記載があることが多いです。
一般的には、郵送請求では以下のような書類を同封することが必要とされます。
この他にも個別に必要な書類がある可能性がありますので、自治体のホームページを確認したり、不安な場合には役所の担当者に電話して聞いたりして、差し戻されないように必要書類を揃えて発送しましょう。
郵送請求は遠方の自治体にも対応できますが、書類が不足すると差し戻しや再請求になってしまうこともあります。
そして、郵送請求は、郵送の日数に加えて役所側での処理の日数がかかりますので、一般的には、請求した書類が戻ってくるまでには1〜2週間を要します。
差し戻しや再請求になると期限のある手続きに間に合わない可能性もあるので、焦らず、必要書類を確実に封入したかどうか確認し、慎重に進めましょう。
郵送請求のミスを減らすためには、請求先メモとセットで請求を進め、届いた戸籍の連続性を確認しながら次の請求先を決めると無駄を減らせます。
【フロー】郵送請求を工程として回す手順
広域交付とは、令和6年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口で戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになった制度です。
広域交付は、戸籍に記載がある本人とその配偶者・直系の親族(父母、祖父母、子、孫など)のみが利用できます。
非常に便利な制度ですが、代理人による請求や郵送での請求はできませんので、注意です。
必要な戸籍がそろったら、収集した戸籍を並べ直して読み解き、図面(相続関係説明図)に落とし込んでおくとよいでしょう。
まず、集めた戸籍を古いものから新しいものへ時系列に並べ替えると読み取りやすくなります。
並べ替えたら、出生から死亡までの連続性が取れているかを確認し、不足があれば早めに追加で請求しましょう。
相続関係説明図とは、戸籍を読み解いた内容を整理し、相続関係を説明できるようにまとめた資料のことを言います。
被相続人の情報と相続人の情報を図に落とすことで、提出先や家族間で誰が関係者かを共有して把握することが容易になります。
後で見返したときに根拠となる戸籍へ戻れるよう、表題と基本情報を揃え、必要そうな関係事項は戸籍の記載に沿って注記するとよいでしょう。
【記載項目チェック】相続関係説明図で押さえたい要素
相続関係説明図が整うと、次に法定相続情報一覧図の申出書類を作る際の指標になります。
法定相続情報証明制度とは、法定相続情報一覧図とともに戸除籍謄本等の束を法務局(登記所)に提出することで、登記官の認証が付いた法定相続情報一覧図の写しの交付を無料で受けられる制度のことを言います。
申出の際は、被相続人の戸籍一式や相続人全員の現在戸籍、相続関係説明図等の提出が必要になります。
法定相続情報一覧図の写しは、戸籍一式と相続関係説明図等を提出した場合と同様の効力があるため、複数の相続手続きで戸籍一式の提出を繰り返す負担を減らすことができます。
例えば、相続登記の申請手続、被相続人名義の預金の払戻し手続、相続税の申告、被相続人の死亡に起因する年金等手続などで、いちいち登記簿の束を提出することは不要となります。
戸籍収集を終えたら、法定相続情報一覧図と申出書を整え、登記所(法務局)へ申出をして写しの交付を受けます。
申出先は以下の地を管轄する登記所のいずれかから選択できます。
なお、登記所への申出は、登記所(法務局)の窓口で申請するほか、郵送でも可能です。
また、手続きの後、提出した戸籍一式は返却されますので、戸籍一式が必要な手続きに再利用することが可能です。
なお、法定相続情報一覧図に記載される情報は提出した戸籍一式の記載事項に限られるため、相続放棄をした相続人が存在していても、その事実は一覧図に記載されませんので注意が必要です。
【申出フロー】法定相続情報一覧図の写しを受け取る流れ
一覧図や申出書を作成して提出する際には、氏名の漢字や生年月日の数字など、細かな記載のミスがないか今一度確認しましょう。
【使い分けと確認】相続関係説明図と法定相続情報一覧図
なお、法定相続情報一覧図は登記所で5年間保管されるため、その期間中は当初の申出人から再交付の申出ができます。
相続手続きにおいて、戸籍謄本が足りないまま進めようとすると、相続人の範囲が不明確で、相続に関する手続きを進めることができません。
まずは、取得した戸籍が「被相続人の出生から死亡までつながる戸籍一式」になっているかどうか、除籍謄本や改製原戸籍も含めて一度確認しましょう。
戸籍一式が整ったら、相続人全員の現在戸籍や住民票の除票・戸籍の附票などの住所資料を切り分けつつ、相続関係説明図に落とし込んでおくとよいでしょう。
なお、相続人の範囲の調査(戸籍などの必要書類の収集)に関しても、相続手続を法律事務所に依頼することで代わりにやってもらうことが可能ですので、ご検討ください。
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